『ユメみるiPhone』刊行記念トークセッションに行ってきた

ユメみるiPhone ―クリエイターのためのiPhone SDKプログラミング刊行記念トークセッションに行ってきた。
超要約すると「好きなものをとことん作れ!遊べ!技術はあとからついてくる」ということかなと。

出演した皆さん

徳井直生さん(ユメみるiPhone)
http://www.sonasphere.com/blog/

笠谷真也さん(Pocket Guitar)
id:kstn

岡村浩志さん(Delaware/Re<ords)
http://www.delaware.gr.jp/

深津貴之さん(ToyCamera)
http://fladdict.net/blog/

AppStoreは市場として儲かるのか?

深津 独立を決めたのが先。iPhoneアプリ作りはじめたのが後。アプリの売り上げは生活の足しにはなっているが長期的に食っていくほどではない。
笠谷 売り切りなので、継続的にもうけるのは難しい。もう1本ヒットをと言われても難しい。3.0で別の課金方法を使ったりアプリ内広告を使えるとやりやすくなるかも。いいアプリでも埋もれているものがある。
深津 今は玉石混淆。なにがいいアプリかわからない。雑誌やブログも新作を追うのに忙しい。自分にあうアプリを探せるメディアがほしい。
岡村 メディアがないと文化にならない。CD-ROMはそれを批評するメディアがなかったので文化にならなかった。映画には内容を語る人がいる。iPhoneの内容について語るメディアがあると残るものになる。Re<ordsはアプリというよりはメディア、プラットフォームにしたい。新作だけでなく、「子供にいいアプリ」とか「恋人同士におすすめ」とか、角度を持って取り上げるメディアが必要。

ヒットを飛ばすコツ、アイデアの源

笠谷 iPhoneを使って今までにできないことをしたかった。マルチタッチのUIに衝撃を受けた。昔から音を出すのがすき。それがつながってPocket Guitarを作った。なぜヒットしたのかはわからない。今USでヒットしているのは一発芸的なもの。しょうもないけど人に見せるのにおもしろい。簡単なゲーム。気軽に遊べるもの。ヒットするかどうかはアプリを出すタイミングもある。ゲームの方が飽きられやすい。PocketGuitarは練習しないと弾けないのがいいのかも。ユーザーにがんばらせる。
岡村 いろんなメディアで作品を発表している。携帯電話、音楽CDなど。自分たちで全部ハンドリングできるものをやりたいと思った。版元がなくなると自分たちの作品でもコントロールできなくなることを体験した。AppStoreの中であれば自分たちが開発者、レーベルオーナーになれるのでおもしろいと思った。レコードの形にしたのは自分たちが好きだったから。新しいiPhoneで古いものが動く、加速度センサーで裏面にできるのがおもしろいと思った。
徳井 アプリケーションというよりは物づくりに近い感覚ですか?
岡村 物っぽく、質感を大事につくった。さわり心地が気持ちよくなるようにプログラミングした。レコードなのでスクラッチは実装したい、とか。音楽プログラミングは情報がバラバラ。どれが一番自分がやりたいことに行き着くのかわからなくて時間がかかった。
深津 大学で工業デザイン。仕事はFlashiPhoneアプリ開発では大学で習ったことを実戦投入している。既存のアプリをマッピングして、「ここに穴がある。競合がいない」と見つけたら開発する。かぶったら負け。かぶった場合は新しい楽しみ(トイカメラなら「制御できない」こと、クアッドカメラなら「動きをとる」ことなど)を付加する。
岡村 コンセプト、広い意味でのデザイン、世界観が大事。
深津 単純に「エフェクトが4個」「こっちは7個」とか競争やってもつまらない。
徳井 「何をやらないか」を意識するのが大事と言う言葉が印象的。
岡村 機能はいくらでも思いつく。レコードプレーヤーならピッチコントローラーつけようとかレコード2枚にしようとか。でもそれはやめて必要最低限な要素のみ残した。Re<ords以外にもレコードアプリはあるが、Re<ordsはほかより強さがあると思う。
笠谷 Pocket Guitarでまずかったなーと思うのは設定画面が長すぎること。要望に応えた結果だけど。ちょっと複雑すぎるけどいまさらはずせない。
深津 昔HOLGAを持っていたがフィルム代が高くて挫折した。写真は何枚も撮って試行錯誤するのがおもしろいのに、フィルム代が障害になる。それをなくして楽しめるものを作りたかった。
岡村 Re<ordsも、データだからピクチャー版を気軽に作れる。昔レコード店でシブがき隊のピクチャーレコードが回っているのがおかしかった。
深津 プロダクトデザイナーごっこがしたかった。前はクライアントがいてFlashキャンペーンサイトを作る仕事だった。自分で物をつくって売ることをやってみたかった。物質的な物づくりだとプロトタイプだけで数百万になるが、ソフトなら個人でできる。
笠谷 iPhoneの魅力はホームボタン1個だけしかないこと。ボタンがあると機能をいろいろつけたくなる。ボタンがないことで自由な発想のUIが作れる。
岡村 アップルはiPhoneや、そこに無数にあるアプリを未来のUIの実験場にしたいんじゃないか?マルチタッチはWindowsMacと考え方が違う。実験の結果優れたUIが残るのでは。
笠谷 Androidはボタンがたくさんあっていろんなやりかたで操作できてしまうのでわかりにくい。

Android

深津 情報をチェックはしているが個人でやるのはつらい。Androidはオープンなので、いろんな人たちがデバイスを作る。すべてのデバイスで動作確認できない。企業ならいいと思うが、個人では大きすぎる。
岡村 あまりチェックしていない。Javaで開発できるのは携帯電話の延長でできるかなと思うが。あまりわくわくする感じがしない。市場としていいかんじになってきたらやるかも。
笠谷 気持ちよさはiPhoneにかなわない。iPhoneだとリストをスクロールしたときに一番下に行くとはねかえったりするがAndroidにはない。VM上で動いているのでCPUをばりばり使うアプリは書きづらい。サウンドまわりもシンセサイザーを作ろうとおもってもAPIがなかったりする。既存のUIではなく新しいUIを作りたい人はiPhoneがいいと思う。

これから開発する人へのエール

笠谷 UIの実験場。いままでにないUIを考えてほしい。
岡村 今まで生きてきた中で経験したこと、感触をiPhone上で再現すると新しい物が生まれる。まだ技術者より。技術的なことがこなれてきたら、その人の人生が反映されるので、いろんな人に開発してほしい。
深津 これからつくるアプリなら、周りの人と会話が生まれるような(自慢でも愚痴でも)アプリ、人と一緒に使うようなアプリがはやるのでは。
徳井 iPhoneのアプリはコスモ、コスモスのようなもの。iPhoneアプリは想像力を刺激する、どこでもドアのようなもの。iPhoneアプリを使うことで想像力がひろがるようなものをつくるとiPhoneはもっと普及するのでは。

以下質問コーナー

おすすめアプリ

深津 bab bab子供用のアプリ。ガラガラをアプリにしたもの。子供に持たせると夢中で遊ぶ。シェイク、音などiPhoneの本質が入っている。
笠谷 twittie。Twitterクライアント。ちょっとしたUI、動きの気持ちよさは実用系アプリのなかでも参考になる。細かい動きにこだわっている。
岡村 ONE DOT ENEMIES アイデアがおもしろい。
徳井 ケース。パスモが入るケース。iPhoneに傷が付かないためのシールも入っている。

OS3.0に向けての取り組み

笠谷 個人的に期待していることはアプリ内課金。音楽系アプリで曲を中で買ったり。外部のデバイスがアプリで使えること。アプリとセットでデバイスを売る、というパターンもありえる。ボタンがない方がいい、ってさっき言いましたが、たまにボタンがほしくなるときもあるかもしれないし…。
岡村 ユーザーのiTunesライブラリの曲を使えるようになるのでそれを使おうと思っているがやれることが少ない(エフェクトをかけたくてもオーディオのバッファーをとれないとか)
深津 3.0用のアプリはこれから。第1弾がでそろったら誰もやってないことをやる。
徳井 Bluetoothステーションからのアプリ配信など。

アプリ開発にかかった時間

深津 iPhoneが出た次の日にObjective-Cの本を買って、それからCの勉強を初めて、会社が終わったあとの時間を使って2週間でつくった。いまだに本を見ないと配列もつくれない。ActionScriptの経験が生きている。まずActionScriptで作ってそれを移植している。
岡村 Mac上でObjective-Cをやっていた。iPhoneのオーディオ周りの資料が少なくて複数やりかたがあるので、作っては壊しを繰り返した。1ヶ月以上かかっている。
笠谷 まとめると1,2ヶ月。時間がかかるのはデザイン。どんなUIにするか、とか。紙に書いて考えたりする。
徳井 アプリ1個につきそれぞれ3日、4日ぐらい。Objective-COSXが出たときからやっていた。

なにからスタートするのがいいか?

笠谷 作りたい物をつくるのが一番いい。Hello World作ってもおもしろくないし。音をだしたいのでサイン波を出してなぞると周波数がかわるアプリを最初に作った。目的をきめてそこだけ作るのがいいのでは。
岡村 興味があるところから始める。音、絵、通信など。アニメーションさせるなら描画はOpenGL以外の選択肢はない。OpenGLは全部つくるので大変だけど。
笠谷 アニメーションならcocos2dというフレームワークがよかった。
岡村 作る物によって使うライブラリが違う。
深津 プログラムは時間をかければなんとかなる。インターフェースでおもしろいものが提案できる物があるかどうか。おもちゃ屋さんでおもちゃを買って遊んで、何か思いついたら作るのがいいのでは。

追記

Re

追記2

ああ、実体参照使えばいいのか。